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交渉人 [本(国内作家)]

タイトル:交渉人
著者:五十嵐貴久

<内容>
3人組のコンビニ強盗犯が総合病院に立てこもった。犯人は銃を所持し、病院内では医師・看護士・入院患者らが人質となっていた。
事件の全てを任されたのは、交渉人(ネゴシエーター)としていくつもの事件を解決に導いてきた石田警視正。彼は巧みな話術で犯人を懐柔し、事件は解決間近かと思われた。
ところが、最後の最後に事件は思いもかけぬ方向へと転がり始める。
コンビニ強盗の病院立てこもり事件・・・その裏側に隠された真実が明らかになる。

<感想>
読み始めたら、一気に最後まで読んでしまいました。それぐらい、読んでいる者を飽きさせない緊張感&スピード感がある内容でした。

話は4つの章に分かれていて、「コンビニ強盗犯が総合病院に立てこもる」→「警察と犯人との対峙」→「逃走する犯人の追跡」→「そして事件の真相へ」という流れになっています。
犯人グループが病院に立てこもり、警視庁が誇る凄腕のネゴシエーター・石田警視正が現場に登場してからは、話がどんどん動き出し、それとともにグイグイとストーリーに引き込まれました。

犯人と石田警視正との間で行われる電話を通じての駆け引き。その時に見せる石田警視正の巧みな交渉術。それによって導き出される犯人像。そして、ところどころに見え隠れする警察内部の裏事情。その様々な要素が絶妙に絡み合って物語を形作っています。
石田警視正が話術で犯人を徐々に懐柔していく過程や、警察の機動力を総動員して逃走する犯人を追い掛けるシーン等は、手に汗握りながら物語にのめり込み、次々とページを捲り続けていました。

しかし、物語の最終章、それまでの話の流れとは内容がガラッと一変します。あまりにも突然の場面転換に、最初戸惑ってしまったくらいです。
そして、全く想像もしていなかった事件の真相に私は心底驚いてしまいました。まさか、こういうラストが待っていたとは・・・!
単純に犯人と警察との頭脳戦がメインだと思って読んでいた私は、完全に度肝を抜かれてしまいました。

守らなければならないモラル。越えてはならない一線。それらを捨ててまでも貫き通したい強い意志。
人として何が許される事なのか、何が大切な事なのか・・・。
様々な事を考えさせられる内容でした。


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クラインの壺 [本(国内作家)]

タイトル:クラインの壺
著者:岡嶋二人

<内容>
ゲーム作家を目指していた上杉彰彦は、新しいゲーム機を開発している会社と契約を結んだ。
最初は自分の書いた原作がゲームになるという事に有頂天になっていた上杉だったのだが、モニターとしてゲームに参加するようになり、その後、一緒にモニターをやっていた梨紗が突然行方不明になってから、徐々にゲームに対する不安を感じ始める。
「現実の世界」と「ゲームの世界」との区別が徐々にあやふやになって行く中、上杉はゲーム会社の裏に隠された謎を探ろうと試みるのだが・・・。

<感想>
こんなゲームが本当にあったら恐ろしい事になるなぁ・・・って、真剣に考えました。

この話の中に出てくるゲーム機というのが、普段私達が日常的に触れているゲーム機とは全く異なるもので、自分自身がゲーム機の中に入り、まるで本当に自分がゲームの世界に存在しているような感覚になるというものでした。

最初は「現実にあったら面白そうだなぁ〜」なんて軽く考えていたんですが、読み進めるうちにそんな考えは消えて、ただひたすら恐ろしくなってきました。
ゲームの中で飲み物を飲めば、その温度や味を感じるし、怪我をすれば、その痛みも感じる。
そして、ゲームの中で人を殺せば、その手応えだって感じる・・・。
ゲームの中で感じるものが、全て自分自身の感覚としてリアルに伝わってくるという代物なのです。

この物語の中で、ゲームのモニターとして登場する梨紗という女の子は、ゲームの中で自分を守る為に正当防衛で人を殺してしまうんです。ところがその後、人を殺す手応えを覚えてしまった彼女は、ゲームの中で自ら進んでたくさんの人を殺すようになってしまうんですよ。
どこにでもいるごく普通の女の子である彼女の、その心の奥に隠された狂気を感じて、言い様のない恐怖に襲われました。
そんな彼女の狂気について、ゲーム開発に携わっている研究スタッフの一人が「ゲームの中だから問題ない」というようなセリフを言うんですが、私はそのセリフに釈然としないものを感じました。

この物語の主人公であるゲーム作家の上杉は、何度もゲーム機の中に入るうちに、ゲームでの感覚があまりにもリアル過ぎて、自分が「ゲームの世界」にいるのか「現実の世界」にいるのか、その判断が出来なくなって苦しむようになってしまいます。
そして、「ゲームの世界」にいるのか「現実の世界」にいるのかを知る為に、彼が最終的に決めたあまりにも辛過ぎる選択・・・。

上杉は、ゲームと現実の間で最後まで自分自身を見極めようとしていました。そして自ら幕を引きました。
しかし、もしも梨紗のようなタイプの人がゲームと現実の区別がつかなくなってしまったらと考え、背筋が凍りました。


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四日間の奇蹟 [本(国内作家)]

タイトル:四日間の奇蹟
著者: 浅倉卓弥

<内容>
ピアニストの如月は、ウィーンで銃撃事件に巻き込まれ、左手の薬指を失ってしまう。命に別状はないものの、ピアニストの命とも言える指を失ってしまった事で、如月は失意のどん底を彷徨い歩いていた。

そんな時、一緒にウィーンでの事件に巻き込まれ、両親を亡くし、如月家で面倒を見ていた知的障碍者の少女・千織が、ピアノに対する驚くべき能力を見せた。
それ以来、如月は千織にピアノを教える事によって少しずつ自分を取り戻していき、二人は介護施設や病院等で小さなコンサートを行うようになっていった。
そんなある日、コンサートの為に訪れたある施設で、二人は思ってもみなかった不思議な体験をすることになる。

<感想>
序盤では如月と千織の関係を説明するような文章が続くので、あまり引き込まれるものを感じられず、途中で読むのを止めようかと迷ってしまったほど内容が淡々としていました。
その後、それまでの話の流れを一変するような大きなアクシデントが物語の中盤で起きるんですが、このアクシデントがある作品と似ていて、「あれ? これって○○のパクリじゃん?」って思ってしまった私は、正直その時点でかなり読む気が失せてしまいました。

しかし、「せっかくここまで読んだのだから最後まで読んでみよう」と気を取り直し、しばらく読み進めてみると・・・「途中で止めなくて良かった〜」と思った程どんどん話が進み出しました。

物語の核になるアクシデント自体は○○と同じようなものでも、その後の展開がそれとは全く違うものになっていて、人と人との繋がりについて、愛について、生命について、死について・・・等、様々な事を考えさせられる深い内容でした。

この作品は、如月と千織の未来に希望を見出せる終わり方だったので、そこが一番良かったです。


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