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クラインの壺 [本(国内作家)]

タイトル:クラインの壺
著者:岡嶋二人

<内容>
ゲーム作家を目指していた上杉彰彦は、新しいゲーム機を開発している会社と契約を結んだ。
最初は自分の書いた原作がゲームになるという事に有頂天になっていた上杉だったのだが、モニターとしてゲームに参加するようになり、その後、一緒にモニターをやっていた梨紗が突然行方不明になってから、徐々にゲームに対する不安を感じ始める。
「現実の世界」と「ゲームの世界」との区別が徐々にあやふやになって行く中、上杉はゲーム会社の裏に隠された謎を探ろうと試みるのだが・・・。

<感想>
こんなゲームが本当にあったら恐ろしい事になるなぁ・・・って、真剣に考えました。

この話の中に出てくるゲーム機というのが、普段私達が日常的に触れているゲーム機とは全く異なるもので、自分自身がゲーム機の中に入り、まるで本当に自分がゲームの世界に存在しているような感覚になるというものでした。

最初は「現実にあったら面白そうだなぁ〜」なんて軽く考えていたんですが、読み進めるうちにそんな考えは消えて、ただひたすら恐ろしくなってきました。
ゲームの中で飲み物を飲めば、その温度や味を感じるし、怪我をすれば、その痛みも感じる。
そして、ゲームの中で人を殺せば、その手応えだって感じる・・・。
ゲームの中で感じるものが、全て自分自身の感覚としてリアルに伝わってくるという代物なのです。

この物語の中で、ゲームのモニターとして登場する梨紗という女の子は、ゲームの中で自分を守る為に正当防衛で人を殺してしまうんです。ところがその後、人を殺す手応えを覚えてしまった彼女は、ゲームの中で自ら進んでたくさんの人を殺すようになってしまうんですよ。
どこにでもいるごく普通の女の子である彼女の、その心の奥に隠された狂気を感じて、言い様のない恐怖に襲われました。
そんな彼女の狂気について、ゲーム開発に携わっている研究スタッフの一人が「ゲームの中だから問題ない」というようなセリフを言うんですが、私はそのセリフに釈然としないものを感じました。

この物語の主人公であるゲーム作家の上杉は、何度もゲーム機の中に入るうちに、ゲームでの感覚があまりにもリアル過ぎて、自分が「ゲームの世界」にいるのか「現実の世界」にいるのか、その判断が出来なくなって苦しむようになってしまいます。
そして、「ゲームの世界」にいるのか「現実の世界」にいるのかを知る為に、彼が最終的に決めたあまりにも辛過ぎる選択・・・。

上杉は、ゲームと現実の間で最後まで自分自身を見極めようとしていました。そして自ら幕を引きました。
しかし、もしも梨紗のようなタイプの人がゲームと現実の区別がつかなくなってしまったらと考え、背筋が凍りました。


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コメント 5

ううう・・・恐ろしそうな話だけどおもしろそう♪
岡嶋 二人さんの小説は読んだことない(と思う・・・)ので
お名前覚えておこうっと♪

小説っていろいろ買ってると、時々読んだ事あるのをまた買っちゃたり
しませんか?しかもしばらく読まないと気づかないバカっぷり。
買いだめ小説の中に同じのが2冊あったり・・・
私だけかしら・・・(≧ε≦o) プッ♪

だから名前と題名をなるべく覚えるようにするのですが
忘れっぽくてダメですね~
by (2007-07-02 11:33) 

masugi

読みました~♪でも、大分前だったので、
設定とか忘れちゃっていました…☆
何だか同時期に読んだ貴志 祐介「クリムゾンの迷宮」の
イメージとかぶってしまって(^_^;)。
by masugi (2007-07-03 20:46) 

翠

>ややさん
私もやっちゃいますよ〜、同じ本を2冊買っちゃう事^^;
あまり印象に残らなかった(要するに面白くなかった)本の場合が多いです。
印象に残らなかった本だと、「これ、まだ読んでないわ」と思って買っちゃうんですよ。
で、ウチに帰って読み始めて、「あれ? ひょっとして読んだ事があるかも?」と思って本棚を調べると・・・
あるんですよねぇ〜同じ本が〜(T_T)

>masugiさん
masugiさんも読んだ事あったんですね〜^^
私はつい最近この本を読んだんですけど、これが書かれたのは結構前なんですよね。
この本が書かれた当時ってスーパーファミコンがゲーム機の主流だった時代で、それを踏まえて考えると、この作者はよくその時代にこんな話を思いついたよなって感心してしまいます☆
by (2007-07-04 23:38) 

イニシャルY

岡嶋二人って、文字通り、藤子不二雄(注)みたいに二人
で一人の作家さんですよね、たしか。
で、仲違いしちゃって、今はもう書いてないって
ことじゃなかったですか? うろ覚えですみません。

注:普通は引き合いに出すなら、エラリー・クイーンか(笑)。
by イニシャルY (2007-07-07 21:16) 

翠

>テリーさん
そうなんです、藤子不二雄(笑)みたいに二人で一人の作家さんなんです。確かこの作品が二人で書いた最後の作品だったハズです。
現在はコンビ解消してますが、片方の作家さんは井上夢人という名前で今でも活躍中です☆
by (2007-07-08 23:34) 

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