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ウェディング・ドレス [本(国内作家)]

タイトル:ウェディング・ドレス
著者:黒田研二


<内容>
結婚式当日、祥子は亡くなった母が自分の為に残してくれたウェディング・ドレスを身に纏い、婚約者のユウが到着するのを教会で待っていた。
そこへ、突然一本の電話が・・・。
その電話の内容は、ユウが交通事故で病院に運ばれたという、祥子にとって信じたくない内容のものだった。
急いで病院へ向かおうと、ウェディング・ドレス姿のままで教会を飛び出した祥子。
しかしその途中、祥子はユウの会社の同僚だという二人の男に車で拉致され、その後乱暴されてしまうのだった。
身も心もボロボロになった祥子は、それでもなんとかユウの安否を確かめようと、ユウが運び込まれた病院に辿り着いたのだが、そこで待っていたのは「ユウの死」という祥子にとって堪え難い事実だった。

一方、予定の時間に少し遅れてしまったものの、無事に結婚式を挙げる教会に到着したユウ。
慌てて教会に飛び込んだユウだったが、そこに婚約者である祥子の姿は無かった。
祥子の代わりに教会でユウを待っていたのは、タキシード姿の見知らぬ男二人。そして、ボロボロにされたウェディング・ドレス。
祥子の姿がない事に不安を感じたユウは、訝しく思いながらもタキシード姿の二人の男に事情を尋ねてみたのだが、返ってきた言葉はユウにとって衝撃的なものだった。


<感想>
私はこの作者の本を今回初めて読んだのですが、これはかなり面白かったです。


物語は、ユウが恋人の祥子にプロポーズするシーンから始まります。
突然のユウからのプロポーズに呆然とし、そして感激のあまり涙を流す祥子。その時の二人の様子が、まずは祥子による一人称で語られます。
そして次の章、今度はユウによる一人称で、プロポーズの時の心境などが語られます。

その後、祥子とユウの出会い、お互いの家庭環境、そして結婚式当日に至るまでの話が、各章ごとに祥子とユウそれぞれの一人称で交互に語られていきます。
物語の序盤はこんなふうに、結婚を控えた二人を描いた「恋愛小説」って感じで進んで行きます。


ところが、結婚式当日に二人が巻き込まれてしまったある事件をきっかけにして、物語の様相はガラリと変わってしまいます。
それまでの恋愛小説調の流れは一瞬にして吹っ飛び、一気にサスペンス調へとなだれ込みます。
この展開、ミステリー&サスペンス好きな私としては、「待ってました!」って感じです。
そしてここからはもう、謎が謎を呼ぶ展開とでも言いましょうか・・・。


この作品は先に述べた通り、祥子による一人称とユウによる一人称、それぞれの章が交互に展開していきます。
しかし、この祥子とユウのそれぞれの章が、結婚式当日の事件を境にして、どんどん食い違った方向に進み始めます。
あまりにも矛盾だらけな二人の話に、一体何が本当で何が嘘なのかと真剣に考えてしまいました。

その矛盾点の中でも一番大きなものが、祥子の章ではユウが交通事故で死んだ事になっているという事。
祥子は「自分が乱暴された事件」と「ユウの事故死」は関連性があると確信し、亡くなったユウの仇を打つべく事件解明に東奔西走する・・・という話の流れになっているんです。

ところが次の章になると、死んだはずのユウによる一人称で話が進むんです。当然ながら、ユウは元気に生きているんです。
しかも、ユウの章では祥子のほうが結婚式当日に行方不明になっていて、ユウが消えてしまった祥子を必死に探している・・・という話の流れになっているんですよ。

もう頭の中が「?」だらけになってしまいました。
これではまるでパラレルワールドが存在するかの様ですからねぇ・・・。


でも、中盤あたりから徐々に「二人の矛盾点」の正体に気付く人、きっと多いんじゃないかと思います。
中盤あたりで祥子の友人が事件に巻き込まれるんですけど、私はそのあたりでピンときました。

でもきっと、私よりも早い段階で気付いた人、たくさんいるんでしょうね・・・。
後でこの本をもう一度読み返してみた時、作品全体に巧妙に伏線がはり巡らされていた事に気付きましたから・・・。
この作者は大胆なトリックを使ったな〜って、ホント感心しちゃいました。
全てを理解してみれば「あぁ、なるほどね」って感じだけれど、それに気付くまでは頭の中グチャグチャ状態でしたから・・・。


これからこの本を読もうという方は、序盤から気を引き締めてじっくり読み進める事をオススメします。
この本の中の一番大きなトリック。それはすでにそこから始まっていますから。






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