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赤い指 [本(東野圭吾)]

タイトル:赤い指
著者:東野圭吾


<内容>
職場で仕事をしている最中、「早く帰ってきて」という妻からの電話を受けた前原昭夫。
いつになく切羽詰まった妻の様子に困惑する昭夫は、何があったのか事情を聞こうとするのだが、妻は「電話では話せない」としか言わず、ただ「早く帰ってきて」と繰り返すばかりだった。
不安な気持ちを抱えながら帰宅する昭夫。
そんな彼を自宅で待っていたのは、中学3年になるひとり息子が殺してしまった、見知らぬ幼い少女の死体だった。




<感想>
これも東野さんの作品ではお馴染みの加賀刑事が登場する作品です。
全体を通してかなり重た〜い内容でした。


この物語の舞台となる前原家は、前原昭夫とその妻、中学3年のひとり息子、そして昭夫の母親という4人が暮らしている、どこにでもあるような普通の家庭です。
しかしそれは外から見た前原家の姿であって、実際のところは家族の絆というものがすっかり崩壊している家なのです。

正直言ってこの前原家、昭夫の母親以外(昭夫・妻・中3の息子)は、人間性を疑ってしまうような3人でした。
まず、妻と息子の2人についてですが、認知症である昭夫の母親の事を2人は疎ましく思っていて、同じ屋根の下にいるのに完全にその存在を無視して生活しています。そのあまりの徹底ぶりに、なんだか心が寒くなりました。
そして、この息子は中3とは思えないほどに思考が幼く、自分のわがままを無理にでも押し通そうとする身勝手さがあり、読んでいてかなりムカつきました。
更に、この息子のわがままを昭夫の妻は何でも聞き入れていて、すっかり言いなりになっているんですよ。わけがわかりません。それが息子の為だと本気で思っているんでしょうかね?

こんな感じで、前原家は誰がどう見ても問題だらけの状態なんですけど、昭夫はその全てに見て見ぬふりを続けていて、解決しなければならない事を先延ばしにしているんです。
正直言って、これが前原家にとって一番の問題点なんじゃないかって思いました。
昭夫が家庭内の問題ともう少しきちんと向き合っていれば、妻が歪んだ愛情を息子に向ける事もなかったんだろうし、息子もここまで自分本意な性格にはならなかったんじゃないかと思うんです。
そして、こんな酷い事件も起こらなかったんじゃないかと・・・。

事件も酷かったけれど、私がこの作品の中で一番酷いと感じたのは、息子を助ける為に昭夫が考えついた計画です。
(詳しい事はネタバレになってしまうので書きませんが)この計画がもう最低最悪の計画なんですよ。読んでいてものすごく気分が悪くなりました。


家庭の問題に対して面倒だからと見て見ぬふりを続けてきて、その結果、家庭崩壊を招いた無責任な昭夫。
ひとり息子に歪んだ愛情を注ぎ込み、それが息子をダメにしている原因だと全く気付いていない愚かな妻。
人を殺めてしまった事実に対し「知らない」「関係ない」というセリフしか言えず、全ての責任を自分の両親に押し付けようとする幼くて身勝手な息子。
そして、その3人で実行に移した、人として恥ずべき計画。

結局最後には加賀刑事の活躍によって、その最悪な計画は失敗に終わったのですが、事件が解決してもなんだかスッキリしない気分でした。
事件解決の際に、認知症の母親がずっと抱えていた重大な秘密が明らかになるんですが、それを知った後にこの母親の心情を思ったら、どれだけ辛かっただろうかと泣けてしまいました。



唯一この本の中で良かったなぁと思うのは、ラストの加賀刑事と父親のエピソードです。
酷い話の後だったから、より一層ジーンときました。
最後にこのエピソードがあって心が洗われました。





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